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「骨粗鬆症は老化現象ではなく病気」「治すことができる病気」
そう熱意を込めて語る大阪市西淀川区にある中岡クリニックの中岡大樹(なかおか だいき)院長。全国的にも数少ない「日本骨粗鬆症学会 認定医」の資格を持ち、「骨粗鬆症専門クリニック」を自認するこちらのクリニックでは、高精度な骨密度検査が行える全身型骨密度測定器(米国Hologic社 Horizon)を導入し、骨粗鬆症治療ガイドラインで推奨されている「DEXA(デキサ)法」にて骨粗鬆症の早期発見に力を注いでいます。
「骨粗鬆症治療の最終目標は“不自由のない長寿”」と語る中岡院長に、骨粗鬆症治療に力を入れて取り組むようになったきっかけ、骨粗鬆症を取り巻く現状、そして検査の重要性などについてお聞きしました。

過去と現在、骨粗鬆症を取り巻く
環境は変わりつつあります
それでもなお、「骨粗鬆症という分野は
遅れている」と言わざるを得ません

骨粗鬆症の専門的な検査・治療を行われていますが、そのきっかけは?
interview 01

骨粗鬆症の専門的な検査・治療を
行われていますが、そのきっかけは?

話は神戸大学時代、初期の研修が終わって、研究分野を決める時まで遡ります。
神戸大学の第三内科というのは扱う研究・診療が広範囲に及ぶのですが、その中でもメインのグループの1つである骨粗鬆症のグループに入らないかと誘われたのがきっかけです。正直、グループに入った当初は特別な思い入れがあったわけではないのですが、後々振り返ると、そのタイミングで骨粗鬆症の研究・診療に携われたのはとてもラッキーだったと思います。

私が骨粗鬆症のグループに入り研究を始めた頃、その内容は「原始的」とも言えるものでした。何十年も前から行われていたビタミンDを使った治療だとか、何となくの診断方法だとか、今も骨粗鬆症は決して進んでいる分野とは言えないのですが、今以上にまだまだ検査や治療が確立されていない状況だったのです。
それでも神戸大学は骨粗鬆症を専門的に扱っていたので、骨密度を計測する機器もあり検査は行っていましたが、当時は骨粗鬆症に対する社会全体の受け止め方がそのような感じで、何となくの診断で「この人は骨が弱そうだな」と思ったらビタミンDを治療に使うといったような、そんな時代だったのです。
それから時を経て、今では骨折を3分の1にする、4分の1にする、股関節の骨折を半分にするなどの画期的なお薬が開発されています。かつての原始的とも言える研究・診療が行われていた時期、そして今のように様々なお薬が開発されて「治せる病気」となった時期、そうした移り変わりを医師として肌で感じることができたのはとてもラッキーでした。
ただ、繰り返しになりますが、今も決して骨粗鬆症に対する研究・診療の進歩は高いとは言えないのが実情です。

骨粗鬆症の検査・治療はそんなに遅れを取っている分野なのでしょうか?
interview 02

骨粗鬆症の検査・治療はそんなに遅れを
取っている分野なのでしょうか?

どんな分野でも20年も経つと研究は進むものですが、他の分野と比べて骨粗鬆症は進歩の度合いが低いと感じています。「重要度の割に認知度が低い」というのが私の印象です。
まだまだ「歳を取ったら背中が曲がるのは仕方ない」という考えが一般的です。
糖尿病や高血圧などと比べると、医師も患者様も十分に検査・治療の重要性を理解していないと思います。

実際に骨粗鬆症の治療を受けられている方はどのくらいいるのでしょうか?
interview 03

実際に骨粗鬆症の治療を受けられている方は
どのくらいいるのでしょうか?

かなり少なく、骨粗鬆症患者のうち2~3割程度しか治療を受けていないと言われています。糖尿病や高血圧など他の病気では半分くらいの方が治療を受けているとされているのですが、そう考えると骨粗鬆症の分野はすごく遅れていると言わざるを得ません。
もし骨粗鬆症による骨折を防ぐ手立てがないのであれば、言葉は悪いですがこうした実態も「仕方がない」と言えるのですが、治療により防ぐことは可能なのですから、それを知らないままに骨折を起こし、寝たきりの主要原因になるということはやはり避けなければいけません。

日本骨粗鬆症学会の「骨粗鬆症リエゾンサービス」の広がり、またその影響についてはどのようにお感じですか?
interview 04

日本骨粗鬆症学会の「骨粗鬆症リエゾン
サービス」の広がり、またその影響については
どのようにお感じですか?

当クリニックは内科なので、整形外科のように骨折をきっかけに受診する科ではありません。他院で「骨密度が低い」と言われて心配になった方、現在受けられている治療に疑問がある方、他院の検査では骨密度が高くなっているのか、低くなっているのかわからない方、お薬を飲んでいるけれど骨密度が高くなっている感じがしない方、またその効果を確認したい方、そのような方がお越しになられています。

日本骨粗鬆症学会の「骨粗鬆症リエゾンサービス」というのは、骨折した方が治療を続けていないケースを掘り起こしていき、きちんと治療を受けてもらうようにするもので、内科である当クリニックでは「骨折した方を追いかける」ということはなかなか行えていないのが実情です。骨粗鬆症リエゾンサービスの本来の目的から考えると、整形外科のように骨折をきっかけに受診する科の方が適していると言えます。
ただ、骨粗鬆症患者は1,280万人程度いると言われていますが、現状としては整形外科が診るのか、内科が診るのか中途半端な位置づけになっていて、これは今後の課題です。

内科だけ、整形外科だけでなく、2つの科の連携が必要ということですね?
interview 05

内科だけ、整形外科だけでなく、2つの科の
連携が必要ということですね?

そうですね。そうした連携のための取り組みの一環として、整形外科の先生を対象とした骨粗鬆症のセミナーを開催しています(※コロナ禍の現在はオンラインにて開催)。その他、製薬会社の社員教育の一環としてもセミナーを開催することがあります。「実際にお薬を使っている医師の意見を聞きたい」という声に応えて、骨粗鬆症に対して現在どのような治療をしているのか、御社のお薬はこういう位置づけにある、またこのように使用している、などのことをお伝えしています。

骨粗鬆症は今後も確実に
増えていくはずです
今後15~20年程度は
増加傾向が続くと思われます

皆様、どんなきっかけで受診されていますか?
interview 06

皆様、どんなきっかけで受診されていますか?

骨密度が低いことを指摘されたり、ご自身で何となく気になったりして、ご相談にいらっしゃっています。整形外科を受診した後、当院を紹介されて専門的な治療を受けられる方も多いです。
先ほど、整形外科との連携について少し触れましたが、大腿骨頸部骨折など、骨折の部位によっては整形外科の診療が大きな意味を持つようになります。一方、脊椎の圧迫骨折は手術しないことが多いので、当クリニックにてコルセットで経過観察します。
このように骨折の内容により、整形外科で診た方がいいのか、内科でも対応可能なのか、その後の流れが変わる場合があります。

骨粗鬆症に対してどんな治療を行われていますか?
interview 07

骨粗鬆症に対してどんな治療を
行われていますか?

骨粗鬆症に対しては主にお薬を使って治療を行います。
骨粗鬆症の治療で使用するお薬には大きく「骨吸収を抑制するお薬」「骨形成を促進するお薬」「骨代謝を補助するお薬」「骨形成を促進・骨吸収を抑制するお薬」の4種類がありますが、これまでは骨が溶けるのを抑えるお薬(骨吸収を抑制するお薬)が主流でした。ですが、今では骨を形成するお薬(骨形成を促進するお薬)が出てきていて、背骨を中心に強化する「テリパラチド(フォルテオ)」などがあります。また、テリパラチド(フォルテオ)のバイオシミラー(バイオ医薬品の後続品)も登場しているので、使いやすくなっています。

骨粗鬆症は今後も増えていくものなのでしょうか?
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骨粗鬆症は今後も増えていくものなの
でしょうか?

確実に増えていくでしょう。その背景には人口構成の変化が挙げられます。今、団塊の世代が高齢者に差し掛かっており、今後、高齢者の数が著しく増加していきますので、今後15~20年くらいは骨粗鬆症の増加傾向は続くのではないでしょうか。
そうした傾向にあるにもかかわらず、骨粗鬆症を取り巻く状況が今のままだと、寝たきりにならなくてもいいのに、寝たきりになる方が出てきてしまいます。寝たきりになるリスクがある病気は骨粗鬆症だけではありませんが、例えば脳卒中や心筋梗塞の予防に取り組んでいる方の比率を考えると、やはり骨粗鬆症はまだまだ後れを取っています。

女性で60歳・男性で70歳を目安に
全身型骨密度測定器による検査を
受けていただきたいです

骨粗鬆症を予防する上で大切なことは?
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骨粗鬆症を予防する上で大切なことは?

骨粗鬆症に対する予防の関心度はすごく高いと思っています。ですが、糖尿病や高血圧と比べると、ご本人の日頃の努力で必ず防げるわけではありません。よく「骨粗鬆症予防のために日光浴を」と言われていますが、間違って捉えている方が多いです。日光に当たれば当たるほど、ビタミンDが生成されるわけではありません。冬の北海道以外は、普通に生活していたらあまり気にする必要はなく、ちゃんと必要な量を浴びています。むしろ、浴び過ぎると皮膚がんなどが心配です。またカルシウムやビタミンDの多い食事を摂った方がいいとも言われますが、あまり神経質になる必要はなく、普通に生活していれば充分量摂取できていることが多いです。

何歳くらいから骨密度検査を受けるべきですか?
interview 10

何歳くらいから骨密度検査を受ける
べきですか?

女性であれば60歳、男性であれば70歳を目安に、背骨や股関節など、実際に折れては困る部位の骨密度を測定されることが望ましいと思います。「骨密度検査は受けたことがある」という方もおられるかもしれませんが、1回でいいから全身型骨密度測定器による検査を受けていただきたいです。
骨密度の測定方法は様々ですが、全身型骨密度測定器により背骨や股関節、さらには前腕や全身の骨密度を測る「DEXA(デキサ)法」で確認することが大事です。これは骨粗鬆症治療ガイドラインで推奨されている検査方法で、精度の高い骨密度の測定が行えます。こうした高精度な検査により60歳くらいで骨粗鬆症が発見できると、その後の運命が変わります。

骨粗鬆症は治すことができる病気
「不自由のない長寿」の実現が
治療の最終的な目標です

最後に、サイトをご覧の方へメッセージをお願いします
interview 11

最後に、サイトをご覧の方へメッセージを
お願いします

骨粗鬆症は老化現象ではなく病気です。しかも対処方法があり、「治すことができる病気」なのです。「骨粗鬆症は治らない」「歳だから仕方ない」と考える方が多いですが、現在ではお薬による治療で骨折リスクをかなり低減させることが可能です。
「治りにくい」「治療しにくい」というイメージがあるかもしれませんが、実際は骨密度を増やしたり、骨折を減らしたりする治療が可能になっているのです。さらに最近では、早期から骨折を予防できるお薬が出ています。

健康寿命と平均寿命を比較した際、女性では12年、男性では8年くらいの差があるとされています。骨粗鬆症の治療の根本には「健康に長生きするためには、どうすればいいか?」ということがあります。要介護・寝たきりの原因として、骨折は無視できないくらい大きな要因となります。要介護・寝たきりを防ぐためには、股関節の骨折や背骨の圧迫骨折を防ぐことが重要です。今、そのために有効なお薬はちゃんとあるのです。そのことを知っていただき、「不自由のない長寿」を実現してもらいたいというのが、私の切なる願いであり、骨粗鬆症治療の最終的な目標です。

06-4808-3333

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